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レッスン料値上げでも選ばれる音楽教室|価値で築く教室経営術

「近くの教室より高くしたら、選んでもらえないのでは?」

「レッスン料を値上げしたいけれど、生徒さんが辞めてしまったらどうしよう」

個人で音楽教室を経営している先生から、このようなお悩みを伺うことがあります。

長年、生徒さんや保護者のことを第一に考えてきた先生ほど、レッスン料の値上げには慎重になるものです。

私自身も、かつてはそうでした。

教室を始めた頃の私は、「大手音楽教室より安くしよう」と考え、30分レッスンを月4回、月謝4,000円に設定していました。

なぜ4,000円だったのか。

そこには、私自身が大手音楽教室で講師をしていた経験が関係しています。

当時、大手音楽教室では、生徒さんが月謝として約10,000円を支払っていました。一方で、講師である私の手元に入るのは約4,000円でした。

そのため私は、

「それなら、自分の教室でも月謝4,000円でいいのではないか」

と思ったのです。

しかし、40年間の音楽指導、31年間の教室経営を経験した今は、レッスン料についてまったく違う捉え方をしています。

レッスン料は、「30分という時間」に値段をつけるだけのものではありません。

その30分で何を届けるのか。

レッスンとレッスンの間も含めて、どのように生徒さんの成長を支えるのか。

そして、その教育を先生自身が無理なく続けられる仕組みになっているのか。

そこまで含めて考えることが、教室経営における価格設定だと思っています。

この記事では、月謝4,000円からスタートした私が、心身を壊した経験を経て、レッスンの価値そのものを見直すようになった過程をお伝えします。

目次

この記事はこのような先生におすすめです

  • レッスン料を値上げしたいけれど、不安を感じている先生
  • 長年、同じレッスン料のまま教室を続けている先生
  • 周囲の教室と比較してレッスン料を決めている先生
  • 生徒さんのために頑張りすぎて、疲れている先生
  • 価格ではなく教育の価値で選ばれる教室をつくりたい先生

なぜ私は月謝4,000円でいいと思っていたのか

教室を始めた頃の私は、レッスン料を決めるとき、大手音楽教室の金額を基準に考えていました。

当時、大手音楽教室では、生徒さんが月謝として約10,000円を支払っていました。

一方で、講師である私の手元に入るのは約4,000円でした。

その経験から、

「それなら、自分の教室でも月謝4,000円でいいのではないか」

と思ったのです。

30分レッスンを月4回で4,000円。

1回あたりで考えれば、30分1,000円です。

今振り返れば、とても低い価格設定だったと思います。

けれど、当時の私はそれを特別に安いとは考えていませんでした。

むしろ、

「大手音楽教室より安いほうが、個人教室として選んでもらいやすい」

と考えていたのです。

今なら分かります。

私は「大手音楽教室で講師として受け取っていた金額」と「自分で教室を経営するときのレッスン料」を、ほとんど同じものとして考えていました。

けれど、この二つは同じではありません。

個人教室になって初めて見えた「教える以外の仕事」

大手音楽教室に所属しているとき、私は講師としてレッスンを担当していました。

もちろん、指導には責任があります。

しかし、教室全体を一人で経営していたわけではありません。

個人教室を持つと、状況は大きく変わります。

レッスンをするだけではありません。

生徒募集をする。

お問い合わせに対応する。

体験レッスンを行う。

保護者からの相談を受ける。

教材を研究する。

発表会を企画する。

会場を探す。

プログラムを考える。

日程を調整する。

連絡をする。

教室環境を整える。

さらに家庭があれば、家事や育児もあります。

個人教室の先生は、「ピアノを教える人」であると同時に、一つの教室を運営する経営者でもあるのです。

それにもかかわらず、私は「大手音楽教室で講師として手元に入っていた金額」を、自分の教室の価格基準にしていました。

教室を運営するための時間も、見えない仕事も、自分自身が学び続けるための時間も、十分に価格へ反映できていなかったのです。

これは、個人教室を経営している先生に一度考えていただきたいところです。

周辺の教室がいくらなのか。

大手音楽教室がいくらなのか。

それを知ることは参考にはなります。

けれども、それだけで先生ご自身のレッスン料を決める必要はありません。

先生の教室には、先生の教室だからこそ届けられる教育があるからです。

6か月で24人が入会しても教室経営は幸せではなかった

その後、私の教室には、ある時期6か月で24人もの新しい生徒さんが入会してくださいました。

生徒募集という視点だけで見れば、とても順調です。

お問い合わせが来る。

体験レッスンから入会していただける。

空いていた時間が次々と埋まっていく。

必要としていただけることは、先生としてとてもうれしいことでした。

けれども、当時の私は家事も育児もしていました。

そこに、増え続けるレッスンが加わります。

もちろん、生徒さん一人ひとりには丁寧に向き合いたい。

保護者にもきちんと対応したい。

家のこともしたい。

母親としての役割も果たしたい。

私は、すべてを頑張ろうとしました。

そして、心も体も壊してしまいました。

この経験は、私の教室経営に対する考え方を大きく変えることになりました。

生徒さんが増えることだけが、教室経営の成功なのだろうか。

安いレッスン料でたくさんの生徒さんを受け入れることが、本当に生徒さんのためになるのだろうか。

そして何より、

「この働き方を、私はこの先も続けられるのだろうか」

と考えるようになりました。

生徒数だけを増やしても、先生自身が疲れ切ってしまえば、良い教育を長く届けることはできません。

教室経営は、先生自身の人生とも切り離せないのです。

レッスン料の値上げは数字だけを変えることではない

その後、私はレッスン料の考え方を少しずつ見直していきました。

最初に考えたのは、大手音楽教室と同等のレッスン料にすることでした。

「個人教室だから、大手より安くなければいけない」

という自分自身の思い込みを手放すところから始めたのです。

そして、その後は月謝制からワンレッスン制へ移行しました。

30分1回3,000円。

そこから3,300円。

そして30分1回4,400円。

最初の頃は30分×月4回で月謝4,000円でしたから、価格だけを比較すると大きな変化です。

しかし、私は単純に金額だけを上げていったわけではありません。

その過程で、レッスンの内容や提供方法、サポートのあり方そのものを見直していきました。

さらに、新しいコースも生まれました。

発達に特性のあるお子さんを対象とした「音楽知育コース」は30分5,500円。

30分×10回で一曲を完成させる「1曲チャレンジコース」は77,000円。

かつての私なら、この価格を自分で設定することはできなかったと思います。

では、何が変わったのでしょうか。

私の中で、

レッスン料を上げる

という考え方から、

レッスンの価値をつくる

という考え方へ変わったのです。

「30分いくら」では測れないレッスンの価値

音楽教室では、「30分でいくら」「年間何回でいくら」という考え方が一般的です。

もちろん、レッスン時間や回数は価格を考えるうえで必要です。

しかし、先生が提供している価値は、本当にその30分間だけでしょうか。

レッスン前には、その生徒さんの前回の様子を思い出します。

どの教材を使うか考えます。

その日の様子を見て、予定していた指導内容を変更することもあります。

発表会が近づけば選曲を考えます。

保護者から相談があれば、その対応もします。

レッスンが終わったあとも、

「次はどう伝えれば、この子にはもっと分かりやすいだろう」

と考えることがあります。

さらに、その30分のレッスンを提供できるようになるまでには、先生が何年、何十年と積み重ねてきた学びがあります。

私自身も40年間、約700名の生徒さんと向き合ってきました。

その中で学んだのは、同じ教え方ですべての子が伸びるわけではないということです。

一人ひとりの性格も違います。

得意なことも違います。

理解する速度も違います。

音楽に求めているものも違います。

だからこそ、その子を見て、その子に合う方法を考える。

この力は、一日で身につくものではありません。

レッスン料を考えるときには、「30分という時間を売っている」とだけ考えないでいただきたいのです。

その30分の背景には、先生が積み重ねてきた経験、学び、準備、そして教育への思いがあります。

お客様の声を形にすると新しいコースが生まれる

私が価格を見直していく中で、とても大切にしてきたことがあります。

それが、

お客様の声を形にする

ということです。

先生側が一方的に「私のレッスンには価値があります」と決めるだけではありません。

生徒さんや保護者は何に困っているのか。

どのようなレッスンを必要としているのか。

どのようなサポートがあれば、もっと学びやすくなるのか。

その声に耳を傾けます。

たとえば、発達に特性のあるお子さんの場合、一般的なピアノレッスンの進め方が合わないこともあります。

それなら、その子に合わせた学び方を考える。

音楽と知育的な要素を組み合わせ、一人ひとりに合わせたレッスンを設計する。

そこから「音楽知育コース」という新しい形が生まれました。

また、

「ずっと憧れていた、この一曲を弾けるようになりたい」

という方もいます。

何年も通い続けることを前提とするのではなく、「一曲を弾けるようになる」という明確な目的に合わせてレッスンを組み立てる。

そこから、30分×10回で77,000円の「1曲チャレンジコース」という形も生まれました。

価格を先に決めて、それにサービスを合わせたのではありません。

必要とされているものを考える。

私だから提供できる方法を考える。

それをレッスンとして形にする。

そして、その価値に合った価格を設定する。

この順番が大切なのだと思います。

レッスン料の値上げを考えるとき、

「いくらまで上げても大丈夫だろう」

と考える前に、

「私は生徒さんに、どのような価値を提供できるだろう」

と考えてみてください。

価格に対する見方が、少し変わってくるのではないでしょうか。

レッスンとレッスンの間にも価値はある

私のレッスンでは、レッスンとレッスンの間にもLINEを使ってサポートしています。

これは、「サービスをたくさん付ければ価格を上げられる」という意味ではありません。

大切なのは、生徒さんが目的を達成するために何が必要なのかを考えることです。

音楽の学びは、先生と一緒にいる30分間だけで完結するものではありません。

次のレッスンまでの時間に、生徒さんは自宅で練習します。

その中で、

「ここが分からない」

「この練習方法で合っているのかな」

ということが出てくる場合もあります。

必要なときにサポートができれば、次のレッスンまでの学び方も変わります。

つまり、私が提供しているのは「30分間だけのレッスン」ではありません。

一人の生徒さんが目標に向かって進んでいく過程そのものを支えること。

そこまで含めて、レッスンの価値だと考えています。

ただし、先生が24時間いつでも対応しなければならないという意味ではありません。

先生自身が無理をしない範囲で、どのようなサポートがあれば生徒さんの成長につながるのかを考える。

ここにも、持続可能な教室経営という視点が必要です。

値上げしても選ばれる教室が大切にしたいこと

レッスン料を値上げするとき、多くの先生が心配するのは、

「高くしたら選ばれなくなるのではないか」

ということだと思います。

もちろん、価格は教室を選ぶ要素の一つです。

ご家庭によって予算も違います。

すべての方に選んでいただく必要もありません。

だからこそ大切なのは、「安いから」ではない選ばれる理由を育てることです。

どのような生徒さんの力になれるのか

すべての人に合う教室をつくる必要はありません。

先生が得意としていること。

これまで積み重ねてきた経験。

大切にしている教育理念。

それらを明確にすると、

「この先生にお願いしたい」

と感じてくださる方と出会いやすくなります。

価格を下げることで選ばれるのではなく、先生だからこそ提供できる教育で選ばれる。

その教室づくりを目指すことが大切だと思います。

何を大切にして指導しているのか

ピアノが上手になることだけが、音楽教育の価値ではありません。

私は、音楽教室はピアノを教えるだけの場所ではなく、人を育てる場所だと考えています。

考える力。

続ける力。

挑戦する力。

できなかったことができるようになる喜び。

人前で自分を表現する経験。

相手の音を聴くこと。

一つのことを時間をかけて仕上げること。

音楽を通して得られる成長は、演奏技術だけではありません。

だからこそ、先生が何を大切にして指導しているのかを、日頃から保護者へ伝えていくことも大切です。

保護者との信頼を日常から積み重ねる

レッスン料の値上げをお知らせするときだけ、突然教室の価値を説明しても、十分には伝わらないことがあります。

価値は、普段から伝えていくものです。

「今日は、ここまで一人でできるようになりました」

「以前より、自分で考えて弾けるようになりました」

「発表会に向けて、こんな成長が見られています」

こうした小さな報告の積み重ねによって、

「先生は、うちの子をきちんと見てくれている」

という安心感が生まれます。

そして、それが信頼になります。

私は、保護者との信頼関係こそが教室経営の土台だと考えています。

値上げしても選ばれる教室をつくるということは、値上げに納得していただくための話術を身につけることではありません。

日頃の教育を通して、

「この教室に通う意味がある」

と感じていただける関係を育てていくことなのです。

適正なレッスン料は先生と教育の未来を守る

6か月で24人もの新しい生徒さんが入会してくださったとき、私は「もっと頑張らなければ」と思っていました。

家事もする。

育児もする。

レッスンもする。

一人ひとりの生徒さんにも丁寧に向き合う。

すべてをきちんとやろうとしました。

けれど、その結果、心も体も壊してしまいました。

この経験があるからこそ、先生方にお伝えしたいことがあります。

先生自身が無理をし続けなければ成り立たない教室経営は、長く続きません。

レッスン料を安くすれば、喜んでくださる方はいるかもしれません。

たくさんの生徒さんを受け入れれば、教室はにぎやかになるでしょう。

けれど、そのために先生が疲れ切ってしまったら、どうでしょうか。

一人ひとりの生徒さんを見る余裕がなくなる。

保護者への対応が負担になる。

教材研究をする時間がなくなる。

そして何より、先生自身が音楽を教えることを楽しめなくなってしまうかもしれません。

それでは、大切にしてきた教育そのものを長く続けられません。

だから私は、適正なレッスン料をいただくことは、先生だけのためではないと考えています。

先生自身の時間と心を守る。

新しい指導法を学ぶ時間をつくる。

一人ひとりの生徒さんと丁寧に向き合う。

より良い教育を届け続けられる環境をつくる。

そのためにも、教室経営は必要なのです。

私は、月謝4,000円だった頃の自分を否定しているわけではありません。

そのときは、そのときなりに一生懸命考えて決めた価格でした。

そして実際に教室を運営し、生徒さんや保護者と向き合い、失敗もしながら、一つずつ学んできました。

だからこそ、レッスン料の値上げを考えている先生にも、単に「もっと高くしましょう」とはお伝えしたくありません。

まず考えていただきたいのは、

「私のレッスンだからこそ届けられる価値は何だろう」

ということです。

そしてもう一つ。

「この教育を、私は10年先も笑顔で続けられるだろうか」

ということです。

レッスン料の値上げは、価格だけの問題ではありません。

生徒さんや保護者の声を聞く。

必要とされているものを考える。

先生自身の経験や専門性を生かす。

教育の価値を形にする。

その価値を、日頃から丁寧に伝える。

そして、先生自身も無理なく教え続けられる仕組みをつくる。

その積み重ねの先に、

「安いからこの教室」

ではなく、

「この先生だから、この教室に通いたい」

と選んでいただける教室が育っていくのだと思います。

音楽で人を育て、信頼で教室を育てる。

価格を考えることは、教育から離れた「経営だけの話」ではありません。

大切な教育をこれからも届け続けるために、レッスンの価値と価格を一緒に考えていく。

先生自身が幸せに教え続けられる環境を整える。

それもまた、教育者として大切な教室経営の一つだと、私は考えています。

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保護者対応、生徒募集、教室経営、指導法などについて、私自身の40年間の指導経験と31年間の教室運営で学んできたことを、実際の教室で役立てていただける形でお伝えしています。

一つひとつ読みながら、ご自身の教室についてゆっくり考えたい先生にご活用いただければと思います。

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