「生徒募集をしなければ」
「もっと教室を知ってもらわなければ」
教室経営を続けていると、このように考えることは少なくありません。
私自身も、最初は教室を続けていくためには「新しい生徒さんに来てもらうこと」が大切だと思っていました。
そのため、生徒募集について考え、発信をし、教室を知っていただく努力もしてきました。
もちろん、新しい生徒さんとの出会いは大切です。
けれども、40年間音楽指導を続け、31年間自分の教室を運営してきた中で、少しずつ私の考え方は変わっていきました。
何年も通い続けてくれる生徒さんがいる。
一人のお子さんが通ったあと、弟さんや妹さんも入会してくださる。
保護者の方がお友達に教室を紹介してくださる。
卒業してからも連絡をくださる。
発表会では、保護者の方と一緒に、一人の生徒さんの成長を喜ぶことができる。
そのような経験が一つ、また一つと積み重なったとき、私は気づきました。
「生徒募集は、外に向かって頑張ることだけではない」のだと。
むしろ大切なのは、今、目の前にいる生徒さんにどれだけ丁寧に向き合えるか。
そのご家庭に「この教室に通ってよかった」と思っていただけるか。
そこに、長く続く教室経営の土台があるのではないでしょうか。
この記事はこのような先生におすすめです
- 生徒募集を続けているのに、なかなか教室が安定しない先生
- 生徒さんの退会があるたびに、自信をなくしてしまう先生
- 教室の継続率を高めたいと考えている先生
- 保護者との信頼関係をもっと大切にしたい先生
- 生徒募集だけに追われない教室経営を目指している先生
生徒募集だけでは教室経営が安定しない理由
教室経営を考えるとき、多くの先生が最初に思い浮かべるのが「生徒募集」ではないでしょうか。
生徒数が減れば、新しい生徒さんを募集する。
空き時間ができれば、体験レッスンを増やす。
ホームページやブログ、SNSなどで教室を知っていただく。
これらは、どれも必要な取り組みです。
ただし、生徒募集だけを続けていても、教室経営が安定するとは限りません。
たとえば、毎年10人の新しい生徒さんが入会しても、同じ年に10人が退会すれば、生徒数は変わりません。
それどころか、新しい生徒さんを募集するための発信や体験レッスンの準備などが増え、先生自身が疲れてしまうこともあります。
一方で、今通っている生徒さんが長く続けてくださる教室では、少し事情が違います。
生徒さんが成長しながら通い続け、保護者との信頼関係が深まり、そのご家庭から兄弟姉妹をご紹介いただいたり、お友達に教室を紹介していただいたりする。
すると、無理に外へ向かって募集を続けなくても、少しずつ新しいご縁が生まれるようになります。
私は、教室経営では「何人入会したか」だけでなく、「どれだけ長く通っていただけているか」という継続率にも目を向けることが大切だと考えています。
退会防止は「辞めさせないこと」ではない
「退会防止」という言葉を聞くと、何とか生徒さんを辞めさせない方法を考えることのように感じるかもしれません。
しかし、私は退会防止をそのようには捉えていません。
事情があって教室を卒業する生徒さんもいます。
進学や引っ越し、生活環境の変化など、先生の努力だけではどうにもならない理由もあります。
ですから、退会をゼロにすることを目標にする必要はありません。
大切なのは、
「この生徒さんは、今のレッスンを楽しめているだろうか」
「この子にとって、今必要な指導は何だろう」
「保護者の方は、どのようなことを期待しているのだろう」
と、日頃から考えることです。
退会するという結果が出てから慌てて対応するのではなく、普段のレッスンやコミュニケーションの中で、小さな変化に気づいていく。
私は、それが本当の意味での退会防止だと思っています。
つまり、「辞めないようにする」のではありません。
「続けたいと思える教室をつくる」のです。
この二つは、似ているようで大きく違います。
継続率の高い教室は生徒の成長を見ている
音楽教室に通う目的は、生徒さんによって違います。
コンクールを目指す子もいれば、好きな曲を弾けるようになりたい子もいます。
音楽を楽しみたい子もいますし、自信をつけたい子もいます。
だからこそ、すべての生徒さんに同じゴールを求める必要はありません。
私が大切にしてきたのは、「その子にとっての成長」を見ることです。
昨日までできなかったことができた。
自分から練習するようになった。
人前で演奏する勇気が持てた。
発表会に挑戦できた。
あいさつができるようになった。
失敗しても、もう一度挑戦できるようになった。
このような変化も、音楽教育が育てる大切な成長です。
私は、音楽教室はピアノを教えるだけの場所ではなく、人を育てる場所だと考えています。
演奏技術だけを見るのではなく、その子自身の成長を見る。
先生がその成長に気づき、言葉にして生徒さんや保護者へ伝えることで、「この教室で成長している」という実感につながります。
そして、その実感は「もう少し続けてみよう」「これからの成長も見てみたい」という気持ちにつながっていきます。
継続率は数字として表すことができます。
しかし、その数字の背景にあるのは、一人ひとりの生徒さんの成長と、ご家庭との信頼です。
数字だけを高めようとするのではなく、その背景に目を向けることが、教育を大切にする教室経営では欠かせないと私は考えています。
保護者との信頼が辞めない教室を育てる
子どものレッスンでは、先生と生徒さんだけの関係を考えていればよいわけではありません。
そこには、必ず保護者の存在があります。
特に幼児や小学生の場合、教室に通い続けるかどうかを最終的に判断するのは保護者です。
だからといって、保護者に気に入られるために何でも合わせる、ということではありません。
必要なのは、日々の小さな信頼の積み重ねです。
成長を具体的に伝える
レッスンが終わったとき、
「よく頑張っていました」
だけで終わらせるのではなく、
「この部分を、自分で考えて弾けるようになりました」
「以前は難しそうにしていましたが、今日は自分から挑戦できました」
など、具体的に成長を伝えてみてください。
保護者はレッスン中のすべてを見ているわけではありません。
先生が言葉にすることで初めて、お子さんの変化に気づくこともあります。
「先生は、うちの子をきちんと見てくれている」
そう感じていただけることが、信頼につながっていきます。
小さな違和感をそのままにしない
生徒さんの表情がいつもと違う。
宿題への取り組み方が変わった。
保護者からの連絡の雰囲気が少し変わった。
長く指導をしていると、このような小さな変化を感じることがあります。
そのときに、「きっと大丈夫」とそのままにしないことも大切です。
必要であれば、
「最近、少しお疲れでしょうか」
「何かレッスンについて気になることはありませんか」
と、静かに声をかける。
問題が大きくなる前だからこそ、話せることがあります。
保護者対応というと、クレームへの対応方法ばかりが注目されがちです。
けれども、本当に大切な保護者対応は、問題が起きてから始まるものではありません。
何も問題がない日常の中で、少しずつ信頼を積み重ねることです。
日々のレッスンそのものが生徒募集になる
私自身、以前は生徒募集というと、外へ向けて教室の魅力を発信することだと考えていました。
もちろん、教室を知っていただくための発信は必要です。
けれど、長く教室を続ける中で、別の形の生徒募集があることに気づきました。
それが、今通ってくださっている生徒さんと保護者を大切にすることです。
何年も通ってくださる。
兄弟姉妹が入会してくださる。
保護者がお友達に紹介してくださる。
卒業したあとにも連絡をくださる。
このような出来事は、一度の広告から生まれるものではありません。
毎週のレッスン。
発表会。
保護者との会話。
困ったときの対応。
生徒さんへの声かけ。
その一つひとつの積み重ねから生まれます。
実際に通っているご家庭から、
「この教室なら安心ですよ」
と言っていただけることほど、うれしい紹介はないのではないでしょうか。
それは先生がお願いして生まれる口コミではありません。
ご家庭自身が「誰かに紹介したい」と思ってくださった結果です。
ですから私は、今では生徒募集を「新しい人を探す活動」だけだとは考えていません。
目の前の生徒さんに誠実に向き合うことも、教室の未来を育てる大切な生徒募集なのです。
退会が起きたときに考えたいこと
どれだけ丁寧に教室を運営していても、退会はあります。
長く教室を続けている先生ほど、たくさんの出会いと同じくらい、たくさんの別れも経験されていると思います。
大切に指導してきた生徒さんが辞めると聞けば、先生も寂しいものです。
「私の指導が悪かったのではないか」
「何かできることがあったのではないか」
と考えてしまうこともあるでしょう。
そんなときは、退会そのものを失敗と決めつけるのではなく、一度振り返ってみることをおすすめします。
退会理由だけでなく、その前の経過を見る
退会理由として、
「忙しくなったので」
「勉強との両立が難しいので」
と伝えられることがあります。
もちろん、それが本当の理由である場合も多いでしょう。
ただ、教室側として振り返るのであれば、その言葉だけを見るのではなく、それまでの経過を思い返してみます。
生徒さんの様子に変化はなかったか。
レッスンの内容は、その子に合っていたか。
保護者と十分なコミュニケーションが取れていたか。
先生側の方針と、ご家庭が求めているものにずれはなかったか。
振り返る目的は、自分を責めるためではありません。
次に出会う生徒さんを、さらに大切にするためです。
一つひとつの経験を次の指導へ生かしていくことも、長く教室を続ける先生だからこそできることだと思います。
先生自身が無理をしないことも継続につながる
辞めない教室づくりというと、生徒さんや保護者へのサービスを増やせばよいと思われるかもしれません。
しかし、私はそれには少し注意が必要だと考えています。
無料補講を増やす。
時間外の連絡にもいつでも対応する。
生徒さんのためにと、休日まで仕事をする。
先生の優しさから始めたことでも、それが長く続けば先生自身が疲弊してしまいます。
先生が疲れ切ってしまえば、丁寧なレッスンや穏やかな保護者対応を続けることも難しくなります。
持続可能な教室経営には、生徒さんの継続だけでなく、「先生自身が無理なく教室を続けられるか」という視点も必要です。
できることと、できないことを明確にする。
教室のルールを整える。
必要以上に一人で抱え込まない。
事務作業など、教育そのものではない仕事は仕組み化する。
こうした工夫は、決して冷たい対応ではありません。
先生が長く良い教育を提供するために必要な土台です。
先生自身に時間と心のゆとりがあるからこそ、一人ひとりの生徒さんを見ることができます。
そして、その余裕が保護者との丁寧なコミュニケーションにもつながっていきます。
長く愛される教室は目の前の一人から育つ
教室経営を続けていくうえで、新しい生徒さんとの出会いはもちろん大切です。
けれども、生徒募集ばかりに目を向けていると、すでに教室を選び、通ってくださっている生徒さんの存在を見落としてしまうことがあります。
私は40年間の指導の中で、約700名の生徒さんと関わってきました。
教室を31年間運営し、音楽教室の先生方約200名のご相談を受け、約300回のセミナーにも登壇してきました。
その経験を重ねるほど、教室経営の土台は特別な集客方法ではなく、日々の信頼の積み重ねなのだと感じます。
生徒さん一人ひとりの成長を見る。
その成長を保護者と一緒に喜ぶ。
困ったことがあれば話し合う。
先生自身も無理なく教室を続ける。
そうした一見地味に思える積み重ねが、教室の継続率を支えます。
そして、
「この教室に通ってよかった」
という一つのご家庭の思いが、兄弟姉妹の入会につながったり、お友達への紹介につながったり、新しいご縁を運んできてくれます。
生徒募集と退会防止は、本来まったく別のものではないのかもしれません。
目の前にいる生徒さんを大切にする。
そのご家庭との信頼を育てる。
その先に、生徒さんが長く通い、新しいご縁も自然に生まれる教室があります。
教室経営で大切なのは、「何人集めたか」だけではありません。
一人の生徒さんが、この教室で何を学び、どのように成長し、どのような思い出を持って巣立っていくのか。
そこまで考えることが、教育者としての教室経営ではないでしょうか。
「音楽で人を育て、信頼で教室を育てる。」
新しい生徒さんを探す前に、一度、今通ってくださっている生徒さんのお顔を思い浮かべてみてください。
「この子のために、今できることは何だろう」
その問いから始まる毎日の積み重ねこそが、長く愛される教室をつくっていくのだと思います。
さらに詳しく学びたい先生へ
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